論文の書き方
テーマ
論文の目的
・新しい発見・新しい理論
・新しい視点
・問題の新しい解決法
既存の説との関連
・新説・既存の説を否定
・既存の説の強化
・既存の説の発展
・既存の説の細分化
・既存の説の修正
・既存の説の補完
・既存の説の領域拡大
・既存の説の比較・整理
・既存の説の否定に対する反論
新しい視点の導き方
・既存の視点ではカバーできない領域に着目・既存の視点では正確ではない(or 誤りを招く)点に注目
・共通点を抽出
・仮説を立て、それを検証
・他の分野の視点を持ち込む(異種交流)
・(その分野にとって)新しい分析手法を採用する
「問題の場」と「問題」
「問題の場」はテーマとならない。「問題」がテーマとなる×天皇制が問題だ
○天皇制は民主主義の発展を阻止するか
×福祉国家が問題だ
○福祉国家は国民の真の福祉に寄与するか
×18世紀の哲学
○18世紀の英国哲学におけるプラトン主義の影響-○○の場合
×化学工業における市場調査
○化学工業企業の市場調査部が予算編成に果たす役割-○○社の場合
問題の分類
・学術的に不明・社会問題
トポイ(問題を切り出す手がかり)
・なに・いかに
・だれ
・なぜ
・比較
・因果
テーマ確定の5条件
・このテーマの研究に必要な資料があるか・自分の力で扱いきれるか
・新しい研究テーマであるか
・自分はこのテーマに興味を持っているか
・意義のある研究テーマか
構成
論文の構成
1.背景と目的1-1.背景
1-2.目的
2.準備
2-1.分析手法、実験方法の提示
2-2.言葉の定義
2-3.資料、情報、既存の説、論点の洗い出し
3.論証
3-1.論証、実験
3-2.結果
3-3.結果の検証
4.結語
4-1.結論
4-2.新しい課題
主問と副問
主問(主トピック)と副問(副トピック)で展開する副トピックを手掛かりに論を進め、最終的に、冒頭に提示した主問への回答を自然と導く
構成の細分化
格名:章、主、副、従、属、下アウトラインの筋
1.場所Aから場所Bへ2.時Aから時Bへ
3.重要でないものから重要なものへ
4.既知から未知へ、同意点から論争点へ
5.簡単なものから複雑なものへ
6.原理的なものから応用へ
7.原因から結果へ(結果から原因へ)
8.一般から特殊へ(特殊から一般へ)
話法のタイプ
・描写的(場所、状況)・物語的(できごとの経過)
・説明的(考え、思想)
・論議的(提案、主張)
文章の論理的連結
条件時
場所
譲歩
原因
目的
結果
比較
状態、状況
関係代名詞
段落
1段落に入れる「考え」は原則的に1つ。多くても2つ冒頭、段落の「考え」をまとめた文章を置く
論理的連結(前段との関係)
段落間の論理的連結
まず第一にところで
さらに
他方
要するに
たとえば
この間
同様に
この結果
※必ずしも上記の移行句を使わなければならないというわけではない
「序」の役割
なぜこういう研究をすることがあるのかという存在理由の説明序で論文全体の結論を書いてしまってはいけない(仮説の提示はよい)
文章量の配分の目安
序:5%本体:85%
結語:10%
P→R→S
Problem → Reason → SolveReasonの内訳
Information → Logic
親Pの親Sのために、多くの子Pが発生し、子Pをひとつひとつ子Sしていく
論文執筆の注意点
・新しい“何か”を主軸にする・テーマを絞る
・無関係な情報を入れない
・ニュースレポート記事にしない
・なぜ次のようなことをするのか、を常に事前に提示する
・客観性
・根拠の無いことを書かない
・意義の無いことを書かない
・論証(実験)されていないことを結語に書かない
・新しい情報を結語に入れない
駄目な論文
・横道がたくさんあってメインが分からない・繰り返し、論理矛盾がある
・どこへ向かっているか分からない
・堂々巡り、タコ足論議
・指示代名詞が何を指しているか明確でない
・不必要な、または偏見を示す修飾語がある
・段落から段落への流れがスムーズでない
論証
グループ概念の必要性と危険性
階級、人種、民族、主義などのグループ概念が必要になることもあるが、注意しなければ人物、事柄、出来事、現象の個性を見失い、空虚なjargonに陥る危険性がある「古代」「中世」「近代」という時代区分は客観的に存在するのではない。その内容や時代によって移り変わる。これらの用語を使用するときは注意して内容を明確にしなければならない
同様に「封建制」「封建的」も曖昧な用語であり、定義は困難である
同様に「社会主義」「資本主義」も曖昧である
論証
・実験・資料
・調査と統計
・ロジック
・視点の抽出
自然科学と社会・人文科学の違い
・自然科学観察されたケース・データから仮説(法則)「Aの条件で全てののH2OはBの反応を示す」を立て、解釈・説明を行い、それを実験で確認したり修正したりする
・社会・人文科学
人間の行動を扱うので、自然科学の「全てのH2O」のように「全ての人間」に包括的に当てはまる法則は成立しない
物語的な話法が必要になることもある
説明・解釈のアプローチ
・時間的アプローチ現象の発生・成立を時間的に順を追って説明する
・論理的アプローチ
論理的、分析的に説明する
解決
完全に解決部分的に解決
新しい問題の出現
主観と客観
極力客観性を担保しながら書いている各学問の論文であるが、実際に読んでみると、その執筆者の主観がかなり現れているように思える。その主観は、主に行間から読み取れる場合が多い。また、テーマと、それに基づく論文全体が目指している方向性が、執筆者がかねてより抱えている思想に基づいている資料の引用
・テーマに必要な部分を適格に引用・不要な部分をダラダラ引用しない
・引用箇所のどこがどうポイントなのか、きちんと説明する
資料の類別
◇作為/不作為意識的に後世に伝えようとしたものか、無意識に作られて今に残っているものか
作為
・記念碑文
・政見演説
・メモワール
不作為
・知らずに録音されていた電話の会話
・政府公文書(場合による)
・会計報告
・住居の遺構
・伝説
・風習
◇内容
例
・法律に関するもの
・神学に関するもの
・科学に関するもの
・医学に関するもの
◇目的・機能
・編年史
・年代史
・伝記
・書簡
・新聞
・パンフレット
◇起源
・事件と同年代のもの/後世のもの
・事件と同地方のもの/他地方のもの
・私的資料/公文書
・一次資料/二次資料
一次資料(生データ)
・研究対象の人物が残した資料
・事件と同年代・同地方の資料
・実験データ
・アンケート結果
・インタビュー報告
・フィールドワーク記録
二次資料
・一次資料を材料に書かれた著書・論文
◇文書/その他
書かれたものか、そうでないか
文書(ドキュメント)
・手稿(マニュスクリプト)
・印刷物
・デジタル
非文書
・口伝の資料
・インタビュー音声
・伝説
・民謡音楽
・遺物・遺品
・芸術作品
一次資料重用の原則
論文は、一次資料を用いるのが原則。二次資料に頼るのは孫引きになり、研究者としては三流である資料批判
外的批判・偽造文書でないか
・内容に誤りはないか
・盗用部分はないか
・改竄部分はないか
・年月日、著者、誰宛か
内的批判(信憑性)
・言葉・文章の意味
・由来・出所
・無理・矛盾
・可能性・蓋然性・確実性
・正確度・批判性
・報道能力
・意図
・偏見
・研究者自身の偏見・能力
注の種類
・資料からの直接引用の出典を示すもの(図表、統計も含む)・資料からの要約の出典を示すもの
・自分の意見ではない意見の出典を示すもの
・本文に入れると記述の妨げになるが、本文の理解に役立つ補足情報、補足コメント
他者の論文への批判
・資料情報の不足・命題の誤謬:著者は事実と違う命題を立てていないか
・推理の誤謬
・制約:著者は意図した計画は全体的にどのくらい十分に実現したか
論争における反論
相手の主張命題にぴったり寄り添って彼をマークし、常に水漏れ箇所がないか気を配り、あったらただちにそこを突いて反論する・主張命題の根拠となるデータは正確か、信憑性はあるか
・資料に党派的偏見はないか、もう古くはないか
・例証の例は典型的、代表的例か
・概念の定義が不十分ではないか
・命題は一般化できるか、特殊なケースではないか
・挙げられた原因は唯一の原因か
・示された因果関係と矛盾する実例はないか
・大前提は正しくても小前提は間違っていないか
・この命題は議論と無関係なものではないか
誤った論理
◇推論の誤り・媒概念多義の誤り:例「自由でない者は悪事を働けない。奴隷は自由でないから悪事を働けない」
・媒概念不拡充の誤り:例「全ての有徳者は賢明である。株屋は賢明である。ゆえに株屋は全て有徳者である」
・概念不当拡充の誤り:例「全てのアル中患者はアル中を理解している。彼はアル中患者ではない。ゆえに彼はアル中を理解していない」「経験科学の知識は人間の理性で得られる。経験科学の知識は真理である。ゆえに全ての真理は人間の理性で得られる」
・2つの否定前提から結論を出す誤り:例「日本人は中国人ではない。彼は中国人ではない。ゆえに彼は日本人である」
・否定前提から肯定結論を出す誤り:例「全ての夫は男である。妻は男ではない。ゆえに妻は夫である」
・2つの肯定前提から否定結論を出す誤り:例「全ての人間は理性的動物である。社会党員は人間である。ゆえに社会党員は理性的動物ではない」
・不完全な選言肢を用いる誤り:例「彼は工学部の学生か機械学科の学生である。彼は工学部の学生だから機械学科には属していない」
・前件否定の誤り:例「もし彼が癌なら、あと1年で死ぬだろう。彼は癌ではない。ゆえに彼は1年以内に死ぬことはない」
・後件肯定の誤り:例「もしこの本が有益なら、よく読まれるだろう。この本はよく読まれている。ゆえにこの本は有益である」
◇帰納の誤り
・不当な一般化の誤り
・不当な因果関係設定の誤り:例「産業革命の後に植民地征服が起きたので、植民地征服の原因は産業革命である」「窓なしに光は入ってこない。ゆえに光の原因は窓である」
・不当な類比の誤り
・論点先取:例「彼は盗むはずがない。なぜなら彼は正直だからだ」
・人物論
・聴衆煽動
・敬意論:著名人の権威を利用する
・争点回避:「私が脱税したって? そんなことは誰だってやっているじゃないか」
・多問:複数の問いが含まれているのに、1つの問いのように構成する